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最高裁判所第三小法廷 昭和36年(あ)190号 決定 1963年5月21日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人矢野正明本人及び同被告人の弁護人田崎文厚の上告趣意第一は、単なる法令違反の主張であり、同第二及び同被告人の弁護人金子作造単独の上告趣意は、量刑不当の主張であって、何れも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。被告人矢野正明の弁護人大類武雄、同金子作造の上告趣意及び被告人田村実の弁護人加藤礼敏の上告趣意は、夫々判例違反をいうが、論旨引用の判例は、何れも事案を異にし本件に適切でなく、結局、単なる法令違反の主張に帰し、同四〇五条の上告理由に当らない。(なお、本件の精神病床整備費の国庫補助に関する事務は、国の行政事務であって、これを都道府県知事に委任すべき法令上の根拠がないから、県の事務吏員である被告人田村の本来の職務に属するものとはいえないけれども、記録に徴すれば、右国庫補助金に関する進達事務は、便宜上昭和二五年以降毎年厚生省事務次官又は公衆衛生局長の通牒をもって各都道府県知事に委託され、被告人田村は、神奈川県衛生部予防課長事務代理としてその事務を分掌していたことが認められるから、同被告人の原判示行為は、その本来の職務である精神病予防に関する事務に関連して、同被告人が慣習上若しくは事実上所管する職務行為であるということができる。従って原判決がこれを被告人田村の職務執行と密接な関係のある行為或は準職務行為であると解して、本件につき贈収賄罪の成立を認めたことは正当である。)

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 横田正俊)

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